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武内P「眠る私に口づけをしたのは」

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569PV 評価2件 4.0点
1 : ◆SbXzuGhlwpak 2017年12月30日 (土) 06:05:55 amdXqONW0
瞳を閉じた暗闇の中で、薔薇の甘い香りが咲いた。
鼻孔を満たす柔らかな味わいに、一度目覚めかけた意識が再び沈殿しようとする。

そう、今私は眠りに落ちている。

仮眠を取るために瞳を閉じ、どれぐらい時間が経ったのか。
携帯のアラームは聞こえないが、もうそろそろだろう。
今少しこのまどろみに囚われたいのですが、それももうじき終わり――

そのことは分かっているのに、意識が再び途絶えようとした時のことでした。

頬に、柔らかくみずみずしい感触がしたのです。

それが何であるのか、一瞬考えることができませんでした。

そしてそれがあるモノ――口づけではないかという疑問が浮かんだ途端、意識が急速に覚醒し、急な目覚めに体が驚いて痙攣する。

何とか瞳をこじ開けて目に映ったものは、今にも閉じようとしているドアの向こう側でわずかに見えた長い黒髪と、白く細い指先。

ガチャリと閉まるドアの音をどこか遠くの出来事のように聞きながら、呆然と自分の頬をなでる。

夢などでは決してない、鮮明な感触。

私は、頬に口づけをされた。

では誰に?

今の時刻は19時。
この時間帯にここを訪れることができるスケジュールの人たちの中で、ドアの隙間から見えたわずかな特徴に一致する人はいないかと考える。

一人だけいました。
そして出てきた答えがあまりに有り得ず、愕然として口から漏れてしまう。


「島村……さん?」


正解だと言わんばかりに、携帯のアラームが部屋に鳴り響いたのでした。





島村卯月
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