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よんでますよ、カミジョーさん。

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562 :■■■■:2011/10/03(月) 00:22:25 ID:3Fm1P/Eo
だいたいハワイ編や一端覧祭が終わった辺りを想定してご覧いただければ。

(…………。)

違和感。――白井黒子は、目覚めつつも、かすかに感じる違和感の原因を探っていた。
まだ、頭はほとんど回転していない。

天井に見慣れた凹みのようなキズがある以上、場所は、いつもの寮の部屋で、いつものベッドの上で間違いない。
まだ夜が明けていないのは何となく分かる。ただ、自分の机の蛍光灯が付けっぱなしなのか、眩しくない程度に明るい。違和感はそのせいかと思った時、ある事に気付いた。
(右手が……いえこれは、……掴まれてます、の?)
やや首を起こし、視線を布団から飛び出している自分の右手にやる。黒子は仰向けになって、手のひらを上にして寝ていたのだが、その右手が――すっぽりと大きい手に包まれて、押さえつけられている。

一気に目が覚めた。暗がりの中どう見ても、愛するお姉様の手ではない。ちょっと骨ばった感じの、どう見ても男の手が、隣の布団からにゅっと飛び出しているのだ。
嫌な予感と共に、改めて自分の着衣を意識下で確認する。――『違和感』はこれだ。パジャマがしっくり着れていない。肩やお尻の辺りが、どうにもずり下がったような感覚。

(まさか、わたくしが寝ている間に!? そんな記憶は……睡眠薬か何か盛られた……?)
忍びこんできた暴漢に襲われたのか、……いやそれよりも!
(お姉様! ならばお姉様はどうなりましたの!?)
自分がこれならば、隣に眠る御坂美琴はどうなったのか。

だがそこで、おかしな点に思い当たる。布団……隣に布団?
(そんな手の届く位置に布団が置けるスペースなど……あら?)
さらに首を曲げ、隣の布団の意味を知る。間にあったテーブルをどかせたのか、隣のベッドそのものが連結されているのだ。

もはや何が何だか分からない。分からない以上、まず自分がこの手を握られた状態からの脱出が急務である。
(手っ取り早く飛んで、……そうですわね、まずドアの前まで飛んで、それから……)
別段触れているからといって、テレポートで『連れていく』かどうかは彼女の意思次第である。相手のみ、相手の衣類のみ、等々自由自在であるが、この場合は自分のみ。黒子は意識を集中し、飛……

飛べない。

(??? わたくし明晰夢でも見ているんですの?)
『能力が使えなくなった』という夢でも見ているのか? ならば、と黒子は左手で左太股の辺りをつねってみる。……痛い。
どうやら現実だ。
(精神状態に特に問題が無く、それでいて能力が使えなかったケースは今まで……、キャパシティダウン、あの類人猿が此処に……)
黒子はギクリとする。――『あの類人猿』。
おそるおそる、身を乗り出して隣の布団の端をめくってみる。すぐにあの、ツンツン頭の先が現れた。
(な……!)
夜這いという言葉が脳裏に浮かぶ。が、その考えをすぐに打ち消す。というのも一つ視界に入ったものがあったのだ。

ハンカチ。それは、その少年の右手と、彼女の右手を、手首のあたりで結んでいた。寝ている間に右手同士が外れないようにするためか、締め付けを感じない程度に余裕を持って、結ばれていた――そしてそのハンカチは、見慣れた、御坂美琴のものだったのである。

(お姉様が結わえたんですの……?)
とりあえず黒子はホッとした。未だに状況は掴めないが、御坂美琴が把握している状況である確率が高い。それならば、心配する事態は特にないはずだ。
とは言っても、この能力を封じられた状態は何かと落ち着かない。黒子は左手で、ハンカチの結び目を解こうとするが、利き腕でない左手では、思うように解けない。そうして、苦心していじっている間に。
「ん……白井、起きたのか?」
ぼそぼそと少年の声がした。布団の中からのくぐもった声。

「……ええ」
「じゃあもう大丈夫そうだな。ほれ」
その声と共に、彼の右手が軽く持ち上がった。二人の右手の間に、指2本分ほどの隙間ができる。
瞬間、能力封印が解かれた黒子は真上に”飛び”、自分の布団の上に正座で着地した。

身体をぶるっと震わせてパジャマの違和感を直し、改めて黒子は少年の腕だけが飛び出している図を見下す。
「……さてと、今のうちに帰るか……」
と言いつつ、右手を出して布団の中にもぐりこんだままの少年に動きはない。
「何で出てこないんですの?」
努めて平静に、黒子は問いかけた――どう見ても彼だけではない膨らみの、隣の布団に向かって。ブチ切れるのは、2人がどういう体勢でいるのかを確認してからでも遅くない。

まあ、諸事情は色々あるんだけどな、と聞き取りづらいが少年の声が聞こえる。
「起きてみると俺の左の掌がだな……その、御坂のケツの下敷きになっててさ。指一本動かしたら痴漢以外の何者でもない状況なんで、どうしたもんかと」
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