- 公開日 :
- 2024年12月28日 16時00分
2: 名無しで叶える物語◆q6VWlTdG★ 2024/12/13(金) 20:46:32 ID:???00
<アナウサギが穴から顔を出しました
セラス「……」ジッ…
看護師「おはよう、セラスちゃん」ガララ
看護師「診察の時間だよ。今日は体におかしなところとかないかな」
セラス「ん、元気」ジッ…
看護師「あはは。お返事するときくらいこっちを向いて欲しいんだけど……。そのDVD、ずっと見てるよね。好きなの?」
セラス「好き」
セラス「テレビの動物さんは、こっちを見ないから」
看護師「……そっか」
看護師「じゃあ、また後でね。苦しいな、なにかおかしいな、って思ったらすぐにナースコールするんだよ?」
セラス「うん」コクリ
シン…
セラス「静か」
セラス「でも」
セラス「変な目で見られるより、ひとりの方がずっといい」
セラス(色素の薄い髪と肌、空をスポイトで抜き取ったような瞳の色は、ずいぶんと珍しいらしい)
セラス(奇異な目で見られるのは、きっとそれが理由。大部屋での暮らしは決して居心地のいいものではなかった)
セラス(山の天気のように不安定で揺らぎのある身の上で、さらに好奇の視線に晒されてはたまったものじゃない)
セラス(お母さんに頼み込み、安くはない個室の席を確保してもらった)
セラス(喧騒を遠くに感じるここは安穏と静かで、でも)
セラス「ちょっと、さみしいな」
セラス(テレビでは相変わらず、臆病なアナウサギが映し出されていた)