- 公開日 :
- 2026年10月09日 11時00分
「卒業してから、まだそれほど日は経っていなかった。その日も、吟子ちゃんはアタシの家に遊びに来ていた。姫芽「卒業したら、急に暇になった感じするねー」吟子「姫芽は卒業前から暇そうだったけど」姫芽「ひどくない?」吟子「だって今日もずっと寝転がってるし」姫芽「吟子ちゃんだって一緒にいるじゃん」吟子「私は姫芽に付き合ってあげてるの」姫芽「はいはい。そういうことにしておいてあげる」吟子「何その言い方」姫芽「ふふっ」何をするでもなく、二人でだらだら過ごしていた。そんな、いつも通りの日だった。」
「アタシのスマホが鳴った。姫芽「あ、電話」吟子「誰?」姫芽「知らない番号……」画面に表示された番号には見覚えがなかった。少し迷ってから電話に出る。姫芽「はい、もしもし」吟子「……」姫芽「はい。そうです」電話の向こうから告げられた言葉を、すぐには理解できなかった。姫芽「……え?」吟子「姫芽?」姫芽「お姉ちゃんが……?」交通事故。その言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になった。姫芽「交通事故……」吟子「……」姫芽「今、病院に……?」姫芽「……はい」姫芽「わかりました。すぐ行きます」姫芽「はい……失礼します」」
「電話を切る。でも、すぐには動けなかった。スマホを握ったまま、さっき聞いた言葉を頭の中で繰り返す。吟子「姫芽」姫芽「……お姉ちゃんが事故に遭ったって」吟子「……」姫芽「病院に運ばれたって」吟子「どこの病院?」姫芽「……え?」吟子「私も行く」姫芽「でも……」吟子「今、一人で行かせられないよ」姫芽「……」吟子「病院の名前、わかる?」姫芽「……うん」吟子「じゃあ行こう」姫芽「……うん」病院までどうやって行ったのか、あまり覚えていない。吟子ちゃんが隣にいたことは覚えている。でも、何を話したのか。アタシが何を答えたのか。そこだけ抜け落ちている。頭の中には、電話で聞いた言葉ばかり残っていた。事故。病院。お姉ちゃん。病院に着くと、言われた場所まで案内された。」
「姫芽「……お姉ちゃんは?」医師「ご家族の方です
省略